2011年4月2日土曜日

文句言い

わたしは自他ともに認める文句言いなのですが、今日は新聞に対して文句があります。

震災以来ずっと原発関連の記事を読んでいます。ウェブの新聞記事ですから、紙面の記事よりは詳しくないにしても、それにしても、原発の記事に関しては、時々は説明や注記、図解などがあるものの、今ひとつ深みがない。

恐らく記事を書いている人もいまいち理解できてないで、東電やIAEA、保安院の発表をそのまま伝達しているにすぎないんじゃないかと思うのです。

確かに素人には理解しづらい内容ではあると思うけれど、今はその素人がしっかり知りたいと思っている。だから書く側もしっかり調べてわかるように書いて欲しいのです。

今日、日経の論説委員がこう書いていました。この人の言うように、科学者でも誰でもいいから、専門家は庶民にわかるように知識を提供して欲しいです。

あっそうか。論説委員だって専門家に説明して欲しいって言うんだから、新聞記者はやっぱりしっかりわからないで書いてるのか・・・。

(日経は登録すると月に20記事だけ無料で読めるのですが、それを越すと有料になってしまうのです。月初めでまだ無料で読めてるので、勝手にここにコピペしますね。)


いま科学者の役割は何か 共に危機を悩み考えよう 論説委員 滝順一




「安全委はそれだけの知識を持ち合わせていない」。福島第1原子力発電所で見つかった放射能混じりの水への対応を問われて、班目春樹・原子力安全委員長はこう答えたという。
気さくな人柄と聞くので率直に話したのかもしれないし、首相に怒鳴られて開き直ったのかもしれない。いずれにしてもこの物言いは国民をがっかりさせ、科学者と呼ばれる人たちへの不信を強めたのではないか。
今回の原発事故で、原子力にかかわる科学者や技術者はそれぞれ責任や使命感に駆られていることと思う。政府や東京電力に近しい人は助言したり対策づくりに加わったりしている。班目氏もその一人のはずで、安全委員長としての職務を責任をもって果たされたい。
ここで問いかけたいのは、原子力発電には直接かかわっていない科学者の人たちの役割である。特に物理学や生物学などに携わる人たちなら、原発の設計や安全は専門外だとしても、核反応や放射線については、普通の市民より詳しい知識を持っているはずだ。
震災の余波か、宇宙科学や生命科学の講演会やシンポジウムの開催延期の知らせがいくつも舞い込む。一方で、危機を受けて、原子力やエネルギー問題、放射線医学などについて、市民向けの講座や講演会を新たに開催するという話は、あまり耳にしない。
日本の多くの国民が、いまほど核や放射線について切実に知りたいと思ったことはない。国民が科学の知識や考え方をより深く知り、科学技術の賢い使い方やエネルギーの将来などを考える機会を、なぜ科学者が進んでつくらないのだろう。
原発事故の先行きについて尋ねられても答えられない。そう思って尻込みしているのかもしれない。もしそうなら、それは間違っている。先行きなど東電の幹部とて明言できない。だれにもわからないことだ。わからない中で手探りにでも市民といっしょにこの問題を考え、悩んでみようとは思わないのか。
最近、科学コミュニケーションや、研究を社会に広めるアウトリーチなど、科学者が市民と対話する大切さが唱えられてきた。お茶を飲みながらくつろいで話すサイエンスカフェと呼ばれる試みもあった。
しかし、みなが知りたいと思っている話題に適時にこたえないのでは、こうしたアウトリーチ活動もしょせん自分の研究の宣伝のためにすぎなかったということになる。教壇から、上から目線で庶民を教え諭すことしかできない人たちだということになりはしないか。
日本学術会議は緊急集会を開いたし、インターネット上で盛んに情報を発信して、正確な知識の広まりに力を尽くしている人もいる。すべての科学者が手をこまぬいているというわけではないが、肝心のときに頼りにならないのは考えものだ。
国民には期待がある。日本にはロボットや情報通信などで優れた技術があるはずだと。
放射線が強くて作業者が近づけないとか、がれきがあって内部が見えないとか、事故現場の苦心が伝えられると、なぜロボットや遠隔操作の計測器が出てこないのかと首をかしげる。
研究費を毎年もらって、そうした研究開発に取り組んでいる大学や研究機関がたくさんあったのではないか。なぜ出てこないのかと。
現実には、大学などの研究室にある技術の多くはまだ研究の途上で、いま原発に持ち込んでも使えないどころか、足手まといになりかねないのだろう。
だからといって、ロボット研究者らが口を開かないのは正しい選択だろうか。現状ではここまではできるが、この先が難しいなどと、率直に技術課題について語る機会ではないか。国民は今なら関心を持って聞くはずだ。技術の未成熟をなじることはないだろう。国家的な危機を打開するため、科学界をあげて知恵を絞ってほしいと思う。
1989年に英国の科学者の委員会は、BSE(牛海綿状脳症)に人間が感染する可能性は極めて低いとする報告書を発表した。これを受けて英国政府は牛肉の安全性を強調した。
数年たって、感染牛の肉を食べたことが原因と考えられる患者(変異型クロイツフェルトヤコブ病)が見つかり、科学者への信頼が深く傷ついた。
BSE禍を契機に、英国で科学コミュニケーションの大切さが再認識されサイエンスカフェなどの活動が始まった。日本の科学界や行政はそれをまねて導入してきた。巨大津波と原発危機を契機に、科学への信頼が揺らぎかねない。研究室の中にいる時ではない。

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