2020年5月11日月曜日

失業中

最後に書いてから早4ヶ月。その間に世の中は大きく変わってしまいました。

運送会社にお願いして大物家具と大半の荷物を3月中ばに運んだその傍ら、そこから溢れた載せられない、あるいは載せたくない物をCR-VでNCとOH間を往復してチマチマと運びました。最後の4往復目は予定外で、引越し終了!と思いきや、不動産会社より連絡があり、「キッチンのキャビネットの中に、こんなものが入っているけれど、これは必要?」と写真が添えられていました。がびーん!どうして最後にすべての戸棚やクローゼットを開けて点検するという行為を怠ったのか。。。さすがの私。キャビネットには陶器やガラスの食器類が残っておりました。どうりで3段重ねのアフタヌーンティー用のお皿の一番下が見当たらなかったはず。ということで、翌朝8時にOHを出発し、NCでは荷物を積むだけの15分で回れ右をして、夜の11時にはOHに帰り着きました。往復1000マイル(1600キロ)を15時間とは、我ながら大した記録を樹立。

不動産会社から連絡のあったのが夕方だったのですが、間髪開けずに翌日にNCへ行こうと思い立ったのには理由がありました。その頃、東海岸や西海岸の各州ではすでに外出自粛令が出ており、OHもそのうちに発令されるのではないか、そうなると身動きが取れなくなると思ったからです。NCに向かう途中に友人からメッセージが入り、OHの州知事が外出自粛を発令したとのこと。その日に出かけて良かったと思いました。

3月の終わりから4月末にかけて、他州にて1ヶ月の出稼ぎの仕事が入っていましたが、こんな状況下で本当に仕事はあるのか?キャンセルになるのではないかとずっと訝しく思っていました。それでも出発の2日前に「やはりお客様が来てくださいとのことです」という最終確認があり、NCよりさらに少し遠い州でしたが、車で出かけることにしました。

ちなみにOHの外出自粛令ではある特定の業種は対象から除外されており「専門的サービス」はそのひとつ。本来は弁護士、弁理士、保険やファイナンシャル関連のアドバイザーなどを意図しているのでしょうが、通訳業もこれに該当します。ということで、3月29日に片道600マイルを運転して出かけました。

この時にはすでにほとんどの州において外出自粛や、飲食店は閉鎖またはテイクアウトのみになっておりました。長距離運転はさほど苦にはならないのですが、困ったのはトイレ。途中のレストエリア(高速沿いにあるトイレを備えた休憩所)が閉鎖されていたり、トラックオンリーとなっていたのです。そこでファストフード店へ行ってトイレを借りようと高速を降りたのですが、ドライブスルーのみになっていて、トイレは使用できません。給油の必要はありませんでしたが、近くのガソリンスタンドへ行きトイレをお借りしました。飲み物を購入しましたが。(レストエリアのトイレの方がGSのトイレよりきれいなことが多いので、レストエリアのトイレを好んで使用するのですが、もちろんトイレの状態はGSによります。帰りに寄ったあるGSではトイレは「従業員のみ」となっていて、使わせてもらえず、その近くのGSでは親切にもハンドサニタイザーまで用意されていました。)

5週間の出稼ぎ予定は、3週間後にはそこの社員も休業となり、私の契約期間も短縮されてOHに戻りました。OH州は他州から来た人に対しては2週間の自主隔離を要請していましたので、戻ってから2週間は大人しく家に篭りました。メヒコやチャコが必要な買い物をして玄関先に届けてくれましたので不自由はありませんでした。

こうして4月の半ばまで仕事があった私はラッキーな方で、通訳をしている友人からは、4月以降は全く仕事がなくなったと聞いています。何人かはすでに失業手当を申請しているようですが、貰ったと聞いているのはNYの一人だけで、あとは電話もつながらず申請にさえこぎつけられていないとか。私も先日、申請すべく登録手続きはしましたが、現在は事前登録のみで、受け付けは5月半ばからとのこと。米国の失業率は20%にも上っていますし、経済刺激策に割り当てられた金額もあっという間に消え去っている中、果たして手当がもらえるのやら。

これまでずっと失業保険料は払って来ていましたが、フリーランスという立場で何を持って失業と言い、果たして保険が下りるのかと思っていましたが、こういう事態では役に立つ可能性があることはわかりました。実際にもらえるかどうかはわかりませんけれど。

アメリカは少しずつ自粛解除の方向に向かっていますが、それとは裏腹に感染状況は悪化の一途。上に手厚く下に薄い今のアメリカの政策では経済回復は遅れるでしょう。自分にも直接に影響があるだけに喜ぶべき状況ではないのですが、これをきっかけに社会の構造が少しでも変わればと願っているのですが。

スーパーの店員や公共交通機関の運転手など「必要不可欠な労働者」として今や英雄扱いされている人たちの生活は厳しく、彼らを含んで今や仕事のなくなった時給で生活しているような人たちは、コロナ以前でさえ、一つの仕事では食べていくのがぎりぎり。経済的な余裕を得るためには二つ、三つの仕事を掛け持ちしていたのです。

ニューヨークタイムズにデンマークのマックの店員(=社員)がアメリカのマックの店員を哀れに思っているという論説記事がありました。方や時給は3倍近く保険もあり有給での産休や病休があるのに対し、方や州にも依りますが時給は連邦最低賃金($7.25)の保険なし。

すべての人にある程度の生活を許容した上で、自分が頑張った分だけ富を蓄積するのはよしとして、既得権益を元手に自分より下にいる人たちを虐げながら富を増加することだけを優先することに何の罪の意識も感じないのは、自分の努力でなした財じゃないから取られるのが怖いだけ?と、誰かさんを見て思う。。。コロナもですが早くこんな時代は終息してほしい。